グレタさんは大統領や首相を叱責する権利があるか
我が亡き後に洪水よ来たれ
グレタさんが、各国の為政者たちを叱りつけたのが話題になっている。こどもにそんなことがわかるか、多くのスタッフを抱えた政策決定者を叱責するなんて生意気だ、そんな声もある。https://www.huffingtonpost.jp/entry/greta-thunberg-un-speech_jp_5d8959e6e4b0938b5932fcb6?ncid=fcbklnkjphpmg00000001&fbclid=IwAR1N0oePL3ZCV8rcLwmIT8KHyxIyQdL7C_J5ymDA_IAftOmPdbU8jz8mgyw
でも気候変動に限って言えば、こどもの発言は大統領や首相より重いと考える重要な理由がある。
それはグレタさんは、大統領や首相より長生きするからだ。彼女は気候変動から、より深刻な被害を受ける。
大統領や首相、そのスタッフたちはこどもより被害を受けるリスクがずっと低い。さらにかれらに働きかける企業家たち、そして景気が悪くなる政策を嫌うわたしたち有権者もだ。
かれらは(あるいはわたしたちは)みな、こどもより先に死ぬ。
だから、将来の被害(自分は大丈夫)を軽く見て、目先の利益を優先し、気候変動対策を先送りする。被害を受けるのはこどもたち、そしてこどもたちのこどもたちだ。
未必の故意
フランス国立科学研究センター(CNRS)は17日、22世紀までに世界の平均気温が最大で現在より5・8度上昇するとの見通しを発表した。https://www.asahi.com/articles/ASM9K71J9M9KUHBI054.html大人はそれを聞いてため息をつくが、自分の生きてる間はなんとかなるだろうと思う。台風で被害を受けるリスクが高くなっていることに気づいても、政府が何とかしてくれるとぼんやりと考えている。
ところが、政府を構成する政治家は、次の選挙のときの景気しか見ていない。献金元の財界が経済成長と気候変動とどちらを重視しているかは言うまでもない。
被害者である「こども」が加害者を「決して許さない」と怒るのは当然だろう。気候変動はかれらを確実に破壊するのに、政治家たちは集まって「金や経済成長の話し」をしているのだから。そこは「未必の故意」の犯罪現場なのだ。
人類は「合理的に」絶滅するかもしれない
さて、これは倫理の問題でもあるが、人間の行動原理に関わる問題でもあるので一段と厄介だ。大人が自分の被害と所得低下を秤にかけて、所得を重視して気候変動対策をサボるのは、経済的には合理性があるからだ。
つまり気候変動対策をこのまま大人たちに任せれば、人類は滅びる可能性が高い。次の世代の大人たちも同様に被害と所得低下を計算して対策を先送りするだろう。こうした先送りは、被害が壊滅的に大きくなって生存も難しくなるまで続くだろう。
そして「なにがなんでも気候変動を食い止めないと」と大人たちが思うときには、気候変動は政策効果が遅行的なので、手遅れ(火星に移住しないと人類は絶滅)となっている恐れがある。
手遅れになる前に、人々は気がつくと思いたい。しかしそうはいかないと思える証拠はたくさんある。
例えば日本の人口減少はずっと前から確実にわかっていたが、まだだれもなにも手を打っていない。
そして、グレタさんはすでに「手遅れ」となりかかっている、それなのになにも手を打たないと指摘している。
ルールを変えよう
気候変動に関わる政策決定は、ルールを変える必要がある。すでに述べたように、現状では被害を受けにくい人たちほど政策決定に大きな力を持ち、深刻な被害を受ける人ほどその原因をただす決定に参加できない。
最大の理由は年齢だ。予想される被害が少ない人達が政策決定に、世論形成に大きな力をもち、予想被害が大きいほど参加から排除されている。(*その他の理由は経済力や政治力に関わる問題だ。ここでも被害が大きい人ほど政策決定から排除されている。貧しい国の人々が怒る理由はこれだが、ここでは触れない)
当事者が、被害者が参加できないルールは間違っている。グレタさんのが注目される理由の一つは、彼女がそれを指摘しているからだ。
大きな被害を受ける人ほど政策決定に重要な役割を果たす、そういうルールを皆で考えないといけない。実現可能かどうか点検する前に、まず想像力を解き放ってみよう。
すでに人類が絶滅の淵に立っている(これはSFではない、事実そうなのかもしれないのだ)、そうした際にどんな仕組みで政策決定をしたらよいのだろうか。
とりあえず必要なルールについて、いくつかの原則を挙げておこう
ー科学的知見に基づく政策を最優先する(とりわけ経済成長よりも優先する)
ー気候変動対策に関する政策は若者、こどもを主として決定する。
そのために十分な情報を与える
ー年齢が高いものほど、政策決定への参加権を減少させる
ーまだ産まれていない者たちの声を重視する
母親、先住民、宗教などはこの分野で大きな役割を果たせるかもしれない
*上に述べた政治力、経済力の小さなひとたちの重視(大きな人たちの排除)は、もう一つの原則となるだろう
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