新「最底辺の10億人」 貧困者の四分の三が中所得国にいる?! だったら貧困研究はどうなる?援助はどうする?

Andy Summer, 2010, “Global Poverty and The New Bottom Billion: What if three –Quarters of The World’s Poor Live in Middle-Income Countries?”, Institute of Development Studies
http://www.ids.ac.uk/download.cfm?objectid=F1D7952B-DE56-E3B4-B7282EC89A733915

貧困者の大半はもはや貧困国の住民ではない。四分の三は中所得国に住んでおり、四分の一だけが貧困国(主にサハラ以南アフリカ)国民だ。これが著者の主張だ。

最新のデータを分析したところ、もはや貧困問題は貧困国の問題ではないという。コーリアが「最底辺の10億人」で描いたような、脆弱で紛争にさらされた小国ではなく、中所得の安定した大国に、貧困者の多くは暮らしている。

世界の貧困と闘うには、貧困についての研究、政策、援助は全て見直す必要に迫られる。

まず平均所得をもとにした国の分類は見直されるべきだろう。貧困者の中所得国へのシフトは、四つの大国(インド、パキスタン、インドネシア、ナイジェリア)が中所得国に昇格した(にもかかわらず貧困者が増えている)ことに大きく影響されている。低所得国、中所得国という分類は不適切なのかもしれない。

また国際的不平等から国内格差により注目しなければならないし、それにしたがって、国際的再配分や国際秩序の見直しよりも国内的再配分や国内の政治社会改革が重視されることになるだろう。

これに伴い、援助の役割も変わらざるをえない。中所得国の貧困削減に援助は意味があるか明らかではないからだ。

以上が著者の主張だが、アフリカ研究の観点からは、次の疑問が追加される。まずアフリカは、貧困を抱えたままの新中所得国の後を追っているのか、それともアフリカは古典的貧困問題(国が貧しいから人も貧しい)にとどまっているのか?

また成長しつつ貧困を拡大している中所得国の増加は、成長の均霑による貧困削減モデルに疑問を投げかけている。アフリカでも、経済は高成長を維持しているが、貧困者が増加し続けている。これを、成長の初期に不可避のクズネックカーブだと断定するのはむずかしくなりつつある。

新興諸国の登場により、南は分裂したと言われるが、貧困問題の中進国へのシフトは、「南北問題」に終りを告げている。目の前に広がる世界は、国境なき富裕層・大資本と、国境に閉じ込められた(場合によっては国内移動さえ自由にできない)貧困者の二つに分裂した世界だ。アフリカの貧困問題も、こうした文脈から捉え直す必要があるかもしれない。

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